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Sessou-no-ki : Sessou’s Blog
染織家・葛布帯作家 雪草のブログ

メマツヨイグサ

数年前から庭にメマツヨイグサが生えてくるようになったので、それとなく守り育てている。半栽培といえば良いだろうか。そのドラマチックな生き様には驚き魅せられ過去に何度も記事を書き、作品のタイトルにもしている。

「黒系に染められる」というのが元々の動機だったが婦人科系の薬草として用いられてきた歴史もあるそうで、新芽や花、根は食べられるという。そこで今年、花の咲き始めた先端を採りおひたしにしてみた。オクラのようなとろみがあり見た目とは裏腹にあっさりしていて美味しかった。そういえば蕾はオクラに似ている。

この植物は本当にすごくて、先端を採っても脇芽がどんどん伸びて次々と毎日花を咲かせてどんどんタネができる。そのタネの量に比べると芽を出す数はとても少ないのだけど、毎年どこかには必ず伸びてきて花を咲かせてくれるので、染料として食料として、今後もますます守りたいと思う。

ところでメマツヨイグサは二年草で、一年目は地面に近いところで葉を広げるだけで、そのまま越冬し翌年トウを立て夏から初冬までずっと花を咲かせ続け、雪の積もる頃に全草が枯れる。根を食す時には一年目のものが、エネルギーが蓄えられていていかにも美味しそうだが、よほど群生している場所でないと可哀想で掘り起こす気にはなれない。できれば2年目の花を咲かせタネを落とした後の根を食べることができるなら気持ちが良いのだけど、栄養としては食物繊維くらいしかないような気がするがどうだろう。ちなみに根は乾燥させて冬の間の保存食として利用されてきたそうだ。

アイヌ民族はエゾイラクサの立ち枯れたものを採り太陽光と空気と雪と時間を使い糸にし布を織る。その生命を完全に終えたものを、静かで流れるようなエネルギーのみで加工する手法に感銘を受ける、私はこの話が大好きだ。もしもメマツヨイグサの根が2年目のものでも良いのならば、エゾイラクサの利用に似て、自然の循環に対して侵襲的でない形で利用できるから心地よい。

自然界の緑は放っておいても役に立つものばかりだが、そもそもそれらを使って生き残ってきたのだから当たり前といえば当たり前で、「共存、共生」などと今更声高に言わなくても我々はずっとそのようにして生きてきた。勝手に生えてくる緑を雑草と言って嫌い、薬品を撒いて根絶やしにし、スーパーで野菜を買って食卓に並べる。全てを否定するわけではもちろんないが何か流れとバランスがおかしいと、いつも思う。身の回りの身近な生き物に目を向けてそれらを大切に思いながら生きていきたい。

Thank you!
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