七尺帯のご提案
「葛豆帯」 七尺帯地(半幅) 葛布
通常八寸帯地を織る時の糸量(経・緯とも)で、2本の帯地を織りました。寸法として幅四寸×長さ七尺の帯地となります。一般的な帯からすると全体的に小さいので「葛豆帯」と名づけました。また、「手元にある糸を使い切る」こともコンセプトの一つとした色柄となっております。
日常的にちょっと外出したい時や自宅内で帯を締めるとき、現代ある一般的な帯の長さはとても長すぎて持て余します(私の場合ですが)。実際、測ってみると私は六尺ほどで充分でした。ならば初めからその長さの帯で良いのではないか?というのが、この帯づくりの動機です。六尺だとあまりにもギリギリかもしれませんので、少し長くして七尺としました。この制作方法と寸法ならば価格も少し抑えることが出来ますので、葛布の帯をお試しいただく入り口として、あるいは、既に葛布帯をお持ちの方のもう一枚としても、ご検討いただけるかしらと思っております。
この帯を織るにあたり、帯の寸法の変遷について少し調べてみました。
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着物の帯が大きく変化したのは江戸時代、「衣服の下に隠れていた帯が表面に現われ、単なる実用的なものから装飾的なものへと変化していった」(『日本の美術No.514 帯』、長崎巌著、至文堂、2009年、p38)、その過程で帯の幅と長さが大きくなっていった時代はおよそ寛文後半〜元禄頃にかけてであり、それより前の帯の長さは七尺五、六寸であったのが延宝時代頃には一丈ニ、三尺ほどになった。(同誌p40)
また、男性の帯においては、江戸時代一丈以上のものが主流であった一方で庶民の間では「三尺帯」と呼ばれるものがあり、これは三尺の長さのものを一重廻しに締めることからこう呼ばれていたとある(p78)。後に六尺のものを二重に巻くようにもなったが、それでも三尺帯という呼び名は残ることとなった。
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やはり締めやすいのは六尺〜七尺なのだと自信を持ちました。
さて同誌によると、帯の寸法の変遷は実に様々です。特に現代において定着している寸法はだいぶ「装飾系」に寄っていることが分かります。
そのことはもちろん伝統として継承することを大事にしたい。しかし、日常着にはより締めやすいもの、より使いやすいもの、より手にしやすいものを考えることは日々生きる人間として当たり前のことなのだろうとも思います。
(余談ですが、葛布は「装飾系」と「単なる実用系」の両方を行き来できる布だと考えています。)
着物を着る上で、着物を着ることはそんなに大変ではないのですが帯を締めるのが異常なほど大変というのは多くの方が感じることと思います。そのため、私などは近頃、帯をしないで着物を着て歩くようになってしまいました(帯作ってるのに帯を否定)。
例えば何かのゲームのラスボスのように、ハードルの高いものを攻略しその技能を身につける喜びというのもありますが、その一方で、やる気を失う人も多数と思います。入り口として、もっと単純で簡単な帯の存在が欠かせません。
この帯地のご紹介ページはまだ作っておりませんが、アップしたらthreads と当webサイトトップページ「news」にてお知らせいたします。販売は2025年8月に開催予定の個展から開始いたします。少し先ですが、ぜひお手に取ってご覧いただけたらと思います。
尚、「葛豆帯」シリーズは不定期生産につき、受注制作はお受けできませんのでご了承ください。
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